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発展編 株式会社の取引
参考資料:文部科学省検定済教科書
画像:島子島太郎 作
第1編 簿記の基礎
第2編 取引の記帳(その1)
第3編 決算(その1)
第4編 会計帳簿と帳簿組織
第5編 決算(その2)
第6編 取引の記帳(その2)
第7編 仕訳帳の分割
第8編 本支店会計
発展編 株式会社の取引
発展編 株式会社の取引 第32章 株式会社の取引(その1)
1、株式会社とは
これまでは個人企業の取引の記帳について学習してきたが、本章からは株式会社の取引の記帳について学習する。株式会社とは出資者(株主)から資金を調達し、それをもとに経営者によって経営される会社である。
本編で学習する株式会社の取引は、次のとおりである。

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2 株式会社の設立と基本仕訳
●1 株式会社の設立
株式会社は、まず発起人が定款(会社の目的・商号などの基本的事項を記載した文書)を作成し、それにもとづいて株式を発行して、出資者(株主)から資金を調達して設立される。

なお、株式の発行に際し、株主であることを示す株券を発行することができるが、その場合には発行することを定款に定めなければならない。

●2 設立に関する基本仕訳
設立時の資本金は、原則として、株主となる者が会社に対して払い込み又は給付をした財産の金額である。
会社の設立にあたって株式を発行し、株主となる者からの払込金を当座預金とするとともに、その全額を資本金としたときは、次のように仕訳する。

例1のように払込金の全額を資本金に計上するのが原則であるが、例外として払込金額の2分の1以内の金額を資本金に計上しないことができる。
この資本金に計上しない部分は、株式払込剰余金といい、資本準備金勘定(資本の勘定)に計上する。払込金を当座預金とし、払込金額に一部を資本金としない場合は、次のように仕訳する。

また、定款作成費や設立登記費用など、発起人が株式会社の設立準備のために立て替えていた諸費用は創立費勘定(費用の勘定)で処理する。

なお、株式会社の設立後、営業開始(開業)までのあいだにかかった費用は、開業費勘定(費用の勘定)で処理する。

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3 株式の発行
会社設立後、事業規模拡大などのために、新たに株式を発行して資金を調達することができる。この場合の仕訳は設立のときと同じように行う。

なお、株式を新たに発行するためにかかった費用は、株式交付費勘定(費用の勘定)で処理する。

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4 純利益の計上
株式会社の純利益は、決算により、個人企業の場合と同じように、損益勘定で産出される。しかし、株式会社の場合は、このあと資本金勘定に振り替えないで、繰越利益剰余金勘定(資本の勘定9の貸方に振替えて、次期に繰り越す。

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5 剰余金の配当と処分
前述の純利益の計上項目で学んだ繰越利益剰余金は、株式会社の剰余金のなかの一つである。剰余金とは、会社法の規定により、株主に配当できると認められている繰越利益剰余金や、あとで学ぶ任意積立金などをいう。剰余金は、原則として株主総会の決議によって、配当または処分される。剰余金の配当とは、株主に対して金銭などの財産を支払うことをいい、剰余金の処分とは、繰越利益剰余金の任意積立金への振り替えや、損失の処理などをいう。配当及び処分額は、繰越利益剰余金勘定から次に示すそれぞれの勘定の貸方に振替えられる。
●
1 利益準備金
株式会社が繰越利益剰余金の配当を行う場合、会社法の規定により金額@を計上しなければならない。これを利益準備金といい、利益準備金勘定(資本の勘定)の貸方に記入する。
●
2 配当金
株主に対して金銭などで支払われる剰余金の分配額を配当金といい、配当金が決定したとき未払配当金勘定(負債の勘定)の貸方に記入する。配当金の総額のほかに、「1株につき何円」と示すのがふつうである。
● 3 任意積立金
剰余金のうち、会社が定款や株主総会の決議によって任意に積み立てた額を任意積立金という。
任意積立金には、特定の目的を定めて積み立てる新築積立金などや、目的を定めないで積み立てる別途積立金がある。これらは、それぞれの積立金ごとにその積立金の名称をつけた勘定(いずれも資本の勘定)の貸方に記入する。
剰余金の配当と処分のあとに、まだ剰余金が残っている場合、その残額は繰越利益剰余金勘定の貸方残高として示される。そして、次の決算日に純利益が計上されると繰越利益剰余金勘定の貸方に振替えられ、この勘定の貸方残高と合計される。よってその合計額が次の株主総会で剰余金の配当および処分の対象となる。
@
会社が繰越利益剰余金から剰余金の配当として支出する額の10分の一を、利益準備金と資本準備金の合計額が資本金の4分の一に達するまで計上する。


決算の結果、当期純損失が生じたときは、その額を繰越利益剰余金勘定の借方に振り替える。

例12のように、純損失の計上後、繰越金剰余金勘定が借方残高になっている場合、繰越剰余金勘定がマイナスになっていることを意味する。このような場合、この借方残高は原則として株主総会の決議によって処理される。この処理は、任意積立金を取り崩して行うのがふつうであるが、利益準備金や資本金準備金または資本金を取り崩して行うこともできる。

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【基本問題】
次の一連の取引の仕訳を示しなさい。
(1)
沖縄商事株式会社は、設立に際し、株式200株を1株につき\50.000で発行し、全額の引き受け・払い込みを受け、払込金は当座預金とした。
(2)
発起人が立て替えていた会社設立の諸費用\800.000を、小切手を振り出して支払った。
(3)
開業準備のための諸費用\450.000を、小切手を振り出して支払った。
(4) 新たに株式1.000株を1株につき\80.000を発行し、全額の引き受け・払い込みを受け、払込金は当座預金とした。ただし、1株の払込金額のうち\30.000は資本金に計上しないことにした。
【演習問題】
1 次の取引の仕訳を示しなさい
(1)
鹿児島工業株式会社は、設立に際し、株式300株を1株につき\70.000で発行し、全額の引き受け・払い込みを受け、払込金は当座預金とした。ただし、1株の払込金額のうち\20.000は資本金に計上しないことにした。なお、設立に要した諸費用\1.200.000は小切手を振り出して支払った。
(2)
熊本物産株式会社は、会社設立後、営業を開始するまでのあいだに、開店のための広告をダイレクトメールによって行い、その広告印刷代と郵送料の合計額\640.000を現金で支払った。
(3)
宮崎商事株式会社は、事業拡張のため、新たに株式200株を1株につき\90.000で発行し、全額の引き受け・払い込みを受け、払込金は当座預金とした。ただし、1株の払込金額のうち\40.000は資本金に計上しないことにした。なお、この株式の発行に要した諸費用\300.000は小切手を振り出して支払った。
福岡商事株式会社は、事業拡張のため、新たに株式200株を1株につき\80.000で発行し、全額の引き受け・払い込みを受け、払込金は当座預金とした。ただし、1株の払込金額のうち\40.000は資本金に計上しないことにした。なお、株式の発行に要した諸費用\750.000は小切手を振り出して支払った。
2 次の一連の取引の仕訳を示しなさい。
(1)
南北産業株式会社は、第3期決算の結果、当期純利益\3.500.000を計上した。なお、繰越利益剰余金勘定の貸方残高\870.000ある。
(2)
株主総会で、繰越利益余剰金を次のとおり配当および処分することを決議した。
利益準備金 \170.000
配当金 1.700.000
別途積立金 1.600.000
(3) 第4期の決算結果、当期純損失\2.700.000を計上した。
(4)
株主総会において、繰越利益剰余金勘定の借方残高\1.800.000を補填するため、別途積立金\1.600.000を取り崩した。

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第33章 株式会社の取引(その2)1 社債の意味
株式会社は、資金を調達する方法として、前章で学習した株式の発行のほかに、社債券@を発行して、広く一般から長期の資金を借り入れることがある。
これを社債という。
社債は、株式とは異なり負債であるので、一定の社債利息を支払い、一定の期限に償還(返済)しなければならない。
@
社債の発行ごとに、社債券を発行するか、しないかを定めることができる。

2 社債の発行と基本仕訳
社債を発行したときは、社債勘定(負債の勘定)の貸方に払込金額で記入する。社債は、「額面\100につき\98(@\98)」というように割引発行されることが多い。この場合、額面金額より低い払込金額で社債勘定に記入されることになる。
また、社債発行のために要した募集費用、金融機関の手数料などの諸費用は社債発行費勘定(費用の勘定)で処理する。よって、社債を発行して、払込金を当座預金とし、社債発行費を小切手を振り出して支払ったときは、次のように仕訳する。


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3 社債利息の支払い
社債に対しては、一定期日に決められた利息が支払われる。この利息を社債利息といい、これを支払ったときは社債利息勘定(費用の勘定)で処理する。

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4 社債の決算日の記帳
社債の額面金額と払込金額との差額は、社債の償還期までの利息の調整としての性格をもっているので、償還期までの各会計期間に社債利息として配分する@。その配分額は決算日に社債利息勘定の借方と社債勘定の貸方に記入するA。この記帳により、社債勘定の残高は、当初の払込金額から額面金額へとしだいに増加していくことになる。

@ この方法を償却減却方法という。
A この処理は、利払い日に行われる場合もある。
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5、 社債の償還
社債を償還したときは、社債勘定の借方に帳簿価額で記入する。社債の償還方法には、(1)満期償還、(2)抽せん償還、(3)買入償還がある。
●1 満期償還
社債の償還期日(満期日)に、額面金額で償還する方法である。

●2 抽せん償還
社債の償還期日に抽せんを行い、当選した番号の社債を額面金額で償還する方法である。抽選により償還する社債が決定したとき、社債勘定から未払社債勘定(負債の勘定)の貸方に額面金額で振り替える。なお、抽せん償還が予定されている部分の額面金額と払込金額との差額は、抽せん日までの各合計期間に社債利息として配分される。よって、抽選日には、抽せん償還される社債の帳簿価額と額面金額は一致することになる。

●3 買入償還
社債を償還期日前に、証券市場から市場価格(時価)で買い入れて償還する方法である。買入償還した場合、償還する社債の帳簿価額と買入価額との差額は、社債償還益または社債償還損であり、それぞれ社債償還益勘定(収益の勘定)または社債償還損勘定(費用の勘定)に記入する。

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6 株式会社の税金
●1 株式会社に課せられるおもな税金
株式会社に課せられるおもな税金には、法人税・住民税・事業税などがある。これらのうち、国が課す税金を国税、地方公共団体(都道府県や市町村など)が課す税金を地方税という。
●2 法人税・住民税・事業税
法人税は、株式会社などの法人の当期純利益などをもとにして、算出した所得に対して、国が課す税金である。
@ 中間申告
株式会社は、期首から6ヵ月経過後、2ヵ月以内に中間申告を行う。中間申告では前年度の法人税額2分の1または中間決算を行って、法人税額を計算して申告納付する。
A 決算日
株式会社は、決算日に当期純利益を計上すると、これをもとに法人税額を計算する。
B
確定申告・納付
株式会社は、決算日の翌日から、原則として2ヵ月以内に法人税・住民税・事業税は、申告や納付の方法が同じで、これら三つの税金は、まとめて法人税等勘定で処理される。前述の@中間申告、A決算日、B確定申告・納付においては、それぞれ次のように仕訳する。

なお、決算の結果、計上した法人税等は、損益勘定の借方に振り替える。勘定記入を示すと、次のとおりである。

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■
【基本問題】 【演習問題】
【基本問題】
1 次の一連の取引の仕訳を示しなさい。
(1)
広島産業株式会社(決算 年1回)は、第8期初頭に額面総額\30.000.000の社債を、払込金額は額面\100につき\98 利率年4% 利払い年2回、償還期限5年の条件で発行し、全額の払い込みを受け、払込金は当座預金とした。また、社債の発行に要した諸費用\270.000を、小切手を振り出して支払った。
(2)
上記社債について、第1回の利息(6ヵ月分)\600.000を、小切手を振り出して支払った。
(3) 第8紀の決算にあたり、社債利息の当期配分額\120.000を計上した。
(4)
上記社債のうち額面\10.000.000を、発行後4年目の初頭に額面\100につき\98で小切手を振り出して買入償還した。ただし、買入償還した社債の帳簿価額は\9.920.000である。
2 次の一連の取引の仕訳を示しなさい。
(1)
鳥取商事株式会社(決算 年1回)は、中間申告を行って、前年度の法人税・住民税および事業税の合計額\400.000の2分の1を小切手を振り出して支払った。
(2)
決算に際し、当期の法人税等の額\450.000を計上した。
(3)
上記の法人税・住民税および事業税の確定申告を行い、小切手を振り出して支払った。
【演習問題】
1 次の一連の取引の仕訳を示しなさい。
(1)
岡山商事株式会社は、下記の条件で発行している社債のうち額面\5.000.000を、発行後5年目の初頭に抽せんによって償還することを決定した。
額面総額 \40.000.000 払込金額 \100につき\98 償還期限 10年
(2)
上記の未払社債を小切手を振り出して支払った。
2 次の一連の取引の仕訳を示しなさい。
(1)
法人税・住民税および事業税の中間申告を行い、前期の法人税等の額\960.000の2分の1を小切手を振り出して支払った。
(2)
決算にあたり、当期の法人税・住民税および事業税の合計額\990.000を計上した。

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総合記帳演習 @
東京商店の5月中の取引は、下記のとおりであった。よって、次の諸帳簿に記入して、決算を行いなさい。

記帳の指針 合計残高試算表 合計額\3.913.000 残高欄\1.450.000 当期純利益\197.000
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総合記帳演習 A
東海商店の12月中の取引は、下記のとおりであった。よって、
(1)
取引を仕訳帳に記入し、総勘定元帳に転記しなさい。
(2)
現金出納帳・当座預金出納帳・仕入帳・売上帳・受取手形記入帳・支払手形記入帳・商品有高帳(先入先出法による)・売掛金元帳・買掛金元帳に記入しなさい。
(3)
合計残高試算表を作成しなさい。

記帳の指針 仕訳帳の合計金額 \7.826.000 合計残高試算表の残高欄合計額 \3.480.000
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総合記帳演習B
前述(総合記帳演習2)において記帳した、東海商店の資料と決算整理事項によって、
(1)
精算表を作成しなさい。
(2)
決算を行い、現金出納帳の記入をしたうえ、諸帳簿を締め切りなさい。
(3)
繰越試算表・損益計算書・貸借対照表を作成しなさい。なお、決算日は12月31日である。

記帳の指針 当期純利益 \375.000
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【補足】 複式簿記のしくみ








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